用の美
道具に拘ると、道具を通じていろいろなものが見えてきます。
その道具に込められた歴史や思いが流れてくるように感じています。
「用の美」という言葉に惹かれて、いろいろな道具を見てきました。
その中で今、心惹かれてのめりこんでいるのがライターです。
火をつける。
その用途のために作られた道具。
特に、携帯性に優れたポケットライターは、煙草に火をつけることがほとんどメインでしょう。
どうせ吸うならおいしく吸いたい、と思って手にしたダンヒルのローラガスライターから、その道は始まりました。
火をつけるだけなら100円ライターでも、なんならガスコンロでもいい。
でも、思い入れのある道具で火をつけたいじゃん。
そういう思いで買ったライター。
重厚な作りで火付きもよく、シガリロを吸うたびにちょっとリッチな気分にしてくれました。
思えばこのライターは、辛かった時や達成感に満ちているとき。
色んなシーンで吸った葉巻やシガリロに火をつけてくれました。
でも。
もしこのライターが壊れてしまったら。
そして、ダンヒルブランドを保有しているリシュモンが喫煙具の販売だけでなく修理も受け付けなくなってしまったら。
僕は何で火をつければいい?
そう思って、修理を学ばなければ、と思い、ここ数年取り組んできました。
おかげでダンヒルのローラガスタイプであれば、そこそこ修理できるようにはなりました。
これで一安心。
でもダンヒルのガスライターには、ローラガスだけでなく、ドレス、ジェムライン、ユニーク、シルフィード、と多様な型があります。
僕が扉を開いたのは、ローラガスだけ。
自分の持っているシグネチャを一生使い倒したい一心で、それだけは修理技術を磨いたのでした。
その過程で、パーツ取りや腕試し、ひとめぼれ・・・
色んな出会いがあり、数多くのライターが手元に集まり、また、旅立っていきました。
煙草を、シガリロを、葉巻を吸うのに、ちょっとリッチな気分を味わってもらいたいから。
気に入った道具をめでる喜び、使いやすさに心酔する感覚。
僕の思う「用の美」の一つの完成形を共有したくて。
今もって、修理したり譲ったりしたりしています。
ダンヒルのローラガスライターは本当に使いやすいんです。
男性の手になじむ大きさ、重さ。
一回ローラーを回せば火花が飛んで一発着火する特許機構とフリントの特性。
ガスをため込み、必要な時だけガスを噴出する仕組み。
そのためのコアパーツ。
内部機構からして美しい。よく考えられている。
さすがスイス製のライターです。
余談ですが、ダンヒルのガスライターにはスイス製のほかに、英国製、フランス製とあります。
フランス製はシルフィードモデル。
英国製はユニークモデル。
時折見かける日本製のあれ。
よーく見るとロゴがduniell(ダニエル)ですダンヒルじゃないパチもの。
気を付けてくださいね。
「用の美」が心のテーマなので、やはり「使うことを前提としたデザイン」には心惹かれるのです。
喫煙具はその最たるもの。
しかも廃れつつある文化となれば、なおさらです。
先人たちが血道を上げて用の美を追求したその1つ1つに、心打たれるのです。
ナイフもいいっすね。美しい。。
使う人のために精一杯思いを込めて形作られた道具は、もうそれだけで美しい!
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