ちょっと作り変えてみました
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ご隠居!ご隠居!
なんだい昼間から騒々しいねぇ。
ああ熊さんか、まぁお入りよ。
へい、では失礼して。
それで早速なんですがご隠居
ちょっとまった。
そのご隠居ってぇのはそろそろやめてもらえねぇかなぁ
なんでですか。
昼日中から自由なご身分で、これぞまさしくご隠居と
あたしゃね、まだ隠居した覚えはないんだよ。
リストラされたって何度言えばわかるんだい。
働く口を探しちゃあいるが、見つからねぇから仕方なくだな
それでです、ご隠居ぉ
聞きゃしないねぇ。で、なんだい。
へい、それであっしのナニの話なんですが
ナニ?なにの話だって?
ですから、ナニの話で。
ちょ、ちょっとお待ち。
昼日中から自由な身分とか、のたくってるとか、さんざ言っておいてなんだいその相談は。
酒も入らねぇ素面でナニの話だぁ?
どうかしてるんじゃないのかい?
それがもう、どうかしてるんだかしてないんだか、うんともすんとも。
うんともすんとも?
へい。うんともすんとも。
そりゃ、困ったねぇ。体ぁ患えばそうなるとも聞いたことはあるが。
なんか、患ってんのかい?
いやそれが、それ以外はからっきし元気で。
そうかい、そりゃ難儀だねぇ。
で、なんかやってみたのかい。
ええ。巷で売ってる栄養ドリンクってやつをぐいっとやってみたんでさ。
ほう、ぐいっと。
ええ、ぐいっと。でもふにゃっと。
そういうのはいいんだよ。
で、どんなの飲んだんだい。
へい、手持ちもさびしかったんで、ウリだかタンだか書いてあるやつ買いました。
よくわからないけど、たぶんそれはタウリンだねぇ。
肝を労り体を癒す。
少しは効いただろ。
そう、そうなんですが、朝が来てもふんにゃりと
それはいいんだよ。
タウリンじゃぁね、お前さんのお困りごとにはちと荷が重い。
そもそも日頃の食べもんでも取ることができる。
食事は日に三度、きちーんととってるかい?
それはもう、三度の飯を四度にして、四度の飯を五度にして
食べすぎだよそりゃ。
タウリンってぇのはね、わかりやすいとこで言うとカキに入ってる。
へー。そこいらの木に成るんで?
その柿じゃぁないよ、牡蠣。海のミルクといわれるあれだよ。
海のミルク!するってぇと牛がいるわけで、ウミウシですな!
飛んだ飛んだ!行きすぎだよ、お前さん。
牡蠣。フライにしたり土手鍋にしたりするだろ。あれだよ。
ああ、あれ。牡蠣。
あたし、それ、大好き。
いけませんねぇ、ついつい酒が飲みたくなる
酒もほどほどにするんだよ。
飲みすぎはナニに毒だってぇから、酒は断たねぇといけないね。
ええっ!酒をぉ?断つぅ?
そうすれば立つんで?
どうしようもないねぇ、おまえさんは。
まぁね、好きなもんやめるのはなかなかしんどいだろうから。
どれ、一つ効きそうな薬でも教えてあげようかね。
そうこなくっちゃご隠居。
さすがに無駄に物を知ってる
失礼なことをいうもんじゃないよ。
そうさなぁ、滋養や強壮に効くとされている生薬は色々な種類がある。
どれをどう飲み合わせるかは薬屋に任せるが、知ってる奴を教えてやろう。
探せばどれかは入っているだろうから、覚えておいて損はないよ。
◆ニンジン
まずはニンジンだ。
ニンジンは知ってるな、ニンジン。
赤くてウサギが食うやつじゃぁねぇぞ。そいつは英語でCarrot(キャロット)だ。
高麗人参はGinseng(ジンセン)と、ちゃーんと使い分けられている。
百薬の長とも言われるオタネニンジンの根っこだ。
なんでオタネかってぇと、時は江戸、八代将軍徳川吉宗公が、それまでは輸入するしかなかったニンジンの種と苗を入手させて、各地の大名に御種を分けて栽培させたことに由来するそうな。
学名はパナックス・ジンセン。
パナックスってのはギリシャ語で「すべての病気を治療する」ってぇ大層な意味があるらしい。
人(ひと)みたいな成りぃして二股に分かれてる奴が高価とされて、同じ重さの金と取引されたってんだからすげぇよな。
漢字で書いた人参の人(にん)はここから来ている。
で地面から引っこ抜いたら「ギャー」って悲鳴をあげて、聞いたやつはおっ死んじまうっていう、アレ!
マンドラゴラだよそれは。お前さん、無駄なこと知ってるね。
親戚に魔女や錬金術師でもいるのかい。
そんな物騒な生薬じゃぁないよ。もちろん毒もない。
土から引っこ抜いた時は真っ白だけども、蒸して乾燥させれば紅き紅参(こうじん)となり効き目が増すんだそうな。
言わずと知れた滋養強壮の塊で、糖尿病、動脈硬化にも効果があるとな。
こいつをのんどきゃぁ間違いネェ。
◆ゴオウ スッポン
次はゴオウにスッポンだ。
ゴオウはいわゆる牛の胆石だな。
そいつはまた、なんか痛くて縁起が悪そうな
そんなことを言っちゃぁいけない。胆石は胆石でも千頭に一頭からしか取れない貴重なもんだよ。
古くは同じ重さの金と取引されたってぇ話だ。
はぁ、陸(おか)の牛はいい仕事しますね
ウミウシのこたぁ忘れなよ。
人が牛を飼い始めた数千年前から用いられている、歴史あるとてもありがたぁい生薬だ。
「神農本草経集注(しんのうほんぞうけいしっちゅう)」っていう昔の書物にゃぁ、長期服用で新陳代謝を盛んにし、寿命をのばし、物忘れしなくなると書かれているね。
そしてスッポンだな。
言わずと知れた元気の源。
一度食らいついたら雷が鳴っても離しゃぁしねぇと言われる執念深さが生命力を物語ってるね。
おめぇさんも生姜を効かせたまる鍋の一度や二度は食ったことがあるだろう。
ぐつぐつ煮立った鍋を熱々のうちにかっくらえば、汗が噴き出て風邪もふっとんじまうってもんよ。なぁ。
生血は酒で割って飲み、甲羅は乾燥させれば土鼈甲(どべっこう)。これもまたいい薬になるってぇ話だ。
どうだい、効きそうだろ?
いやー、さすがはご隠居ですな。
もちっとご存知ではないですかい?
しかたないねぇそれじゃぁ
◆カンゾウ ホウブシ
次にカンゾウ、ホウブシといこうか。
カンゾウってのはあれだ、甘い草とかくあれだな。英語ではリコリスという。
百薬の毒を解するとも、生薬の王とも言われているんだそうな。
百薬の長がニンジンで、生薬の王がカンゾウ?
なんだかややこしいもんですな。
そう。ややこしいからきちんとおぼえるんだよ。
そのカンゾウにはグリチルリチンという成分が入ってるそうだ。
聞いたことないかい?グリチルリチン酸ジカリウムってやつ。
歯磨き粉やシャンプーなんかに入ってるあれだよ。炎症を抑える効果があると言われているが、脾胃(ひい)虚弱や気血不足に効き、漢方処方のほとんどに配合されてるってぇ優れものだ。
へぇ、難しくてよくわかりませんが、チンには効きそうな名前で
お前さん、素面だよな?
ようもまぁそんな下の話をポンポンと。
聞いてるこっちが赤くならぁ。
紅参になって、引っこ抜いたらギャー!
それはもういいんだよ。誰が毒草だい。
毒草で思い出したけどホウブシ。
ブシってわかるか?そのまま飲んだらアコニチンって成分のせいで嘔吐、呼吸困難、臓器不全となり、その過程で顔がブスーってなるってところからブスの言葉の元になった毒のことだ。
ひえっ、毒ですかい!そんでもってそこにもチンが
それはいいから。いちいち反応するんじゃないよ。
そう、毒。でもな、毒は薬だ。
「附子(ぶし)」、「烏頭(うず)」、「天雄(てんゆう)」とも言うが、つまりはトリカブトの根っこだな、こいつをあれやこれやして毒をすくなーく処理したものがホウブシだ。
新陳代謝を回復させて、強心作用もある。
やはりこれもありがたい生薬だな。うん。
◆カイクジン コクロジン コウクジン
そしてカイクジン、コクロジン、コウクジンってのはどうだ。
こいつらはおめぇさんの為にあるような生薬だな。
カイクジンは、まぁありていにいやぁオットセイの、、、ナニだな。
コクロジンはロバで、コウクジンはワン公だ。
ここらへんは深くは触れないでおくが、いくら勘の鈍いお前さんでも、なぁ?
へぇっ(痛そうに股間を押さえる)
胆石と言いナニといい、聞いてるこっちが痛くなりまさぁ。
草花ばかりではなく動物からも薬をいただいているということだな。
◆カイバ クコシのハゲキテン
お次はカイバ クコシ ハゲキテンってのはどうだ。
こいつらもいわゆる滋養強壮に効く生薬だ。
カイバってのは別名水馬(すいば)、龍落子(りゅうらくし)、水雁(すいがん)、海蛆(かいそ)ともいうが、早い話がタツノオトシゴだ。
そいつの内臓を取り除いて日干しにしたのが海の馬と書いてカイバだ。
海ん中なら、ウシはだめでもウマなら効くと
終わった話をほっくりけぇすんじゃないよ、まったく。
ただ、馬の方がナニが立派で、お前さんに効きそうな気がするな。
なんてこといわせるんだい。
クコシはクコの実だ。おめぇさんも食べたことはあるだろう。
「腹を和らげ、精を増すこと神のよう」そして「長命の霊薬」ともいわれる立派な強壮薬。
そしてハゲキテン。
こいつぁ名前の由来がよくわからねぇ。
だけども滋養強壮によーくきく。
特にお前さんみたいなナニがふにゃーっとしちまった人にうってつけと言われているが、なかなかに高価な生薬と言われているな。
へぇ、それからそれから。
調子がいいねぇ。
◆ロクジョウ ブクリョウ エゾウコギ
ロクジョウ ブクリョウ エゾウコギなんてのはどうだ。
ロクジョウってのはニホンジカ、マンジュウジカの雄鹿の角だ。
しかも、ただの角じゃぁねぇ。春に立派な角がポロッとおち春の終わりごろまた生え始め。
初夏を迎えうっすらと毛が生えている袋角を切り落として出来る生薬だ。
滋養強壮にすこぶる効くってぇ話よ。
ブクリョウは仙人の食い物ともされているな。
これもまた滋養強壮効果があるとされる。
エゾウコギだが、北海道はむかーし蝦夷地といって、そこに生えてたウコギの実だな。根や皮を生薬にする場合は刺五加(しごか)もしくは五加皮(ごかひ)というが、実を使う場合は蝦夷地のウコギでエゾウコギってんだ。
こいつもやはり滋養強壮に効果があるとされているな。
◆トシシ
そしてトシシだ。
昔ぁし昔、棒で腰を打たれたウサギがいたそうな。
大豆畑の中に逃げ込んで、大豆の茎に巻き付いている黄金色の蔓。
その実を食べたら腰の痛みを忘れたように飛んでった。
ウサギに効くなら人間に効くだろうってことで、腰痛で寝たきりの人に
飲ませたら数日で起き上れるように
昔の人、めちゃくちゃしますなぁ!毒か薬かもわかんねーのに寝たきりの人に飲ませたんですかい!
ってぇことはさっきのブシってぇやつも毒とわかってから、毒抜きしちゃぁヒー!毒抜きしちゃぁギャー!って繰り返したんで!
生薬ってのはそういうのの積み重ねなんだよ。
先人の努力をありがたーくいただかなければいけない。
歴史の重みを感じるね。
トシシは腰やひざを直し、老を返じ若くすると、これもまた滋養強壮に良く効く生薬とされている。
へぇ、そいつはすごそうですな。
でもこの際ですからご隠居、他にも効きそうな奴を洗いざらい吐いちまってください
洗いざらいと来たか、欲張りな奴だね。ようしそれじゃあ一気に行くぞ。
◆インヨウカク、ニクジュヨウ、センゾクダン
インヨウカク、ニクジュヨウ、センゾクダンときた。
こいつらは下半身によーく効くと言われている。
インヨウカクは別名イカリソウ。花が船の碇にいているとも、下半身がイキリ立つからとも言われているが、いずれも男にゃありがたい薬にはちがいねぇ。
◆トチュウ センボウ
そしてトチュウ センボウだ。
トチュウはな、杜仲茶っての飲んだことあるか。杜仲っていう木の皮だ。樹液はゴムになるという。
肝腎に効くとされるがそれは肝臓腎臓だけでなく、筋肉や骨にも効果を表し、やはり滋養強壮に効くと、これまた大した生薬だ。
センボウは、仙人の茅(かや)と書く。茅の葉に似ていて飲むと体が軽くなって仙人のようになるといわれているからだそうな。
トチュウもセンボウも、ナニがふにゃーっとしてる野郎に効くってんだから、これまたありがたい生薬だよな。
◆トウチュウカソウ
そしてこいつは不思議な生薬だぞ、トウチュウカソウだ。
冬は虫、夏は草と書くが早い話がキノコの一種だ。
ただし虫、それも蛾の幼虫に寄生するってんだから不思議なもんだよな。
冬に虫だったやつから草が生えてくるんだから、昔の人はびっくりしたろう。
でもってそれを煎じて飲むなんざ、さてはゲテモノ好みがいやがったんで?
探究心の賜物と言いなさい。
なんでもかんでも煎じて飲んで、効いた物だけ残ってる。
有難い時代じゃぁないか。
先人の知恵を存分に借りればいいんだよ。
じゃぁおいらも、そこいらへんのキノコや草を片っ端から煎じたらもしかしたら
おやめなさい。
それだけはおやめなさい。
今から歴史を作ろうとしなくていいんだよ。
◆マカ ウコン
最後はねマカ、ウコンだ。
さすがにこれも聞いたことはあるだろう。
マカは南米ペルーに育つ植物の根っこだ。
インカ帝国の時代から重要な食べ物として栽培されていたそうだ。
栄養豊富で持久力向上・抗疲労作用があるという。
向こうの家畜にリャマってのがいてな、こいつと交換されるくらい珍重されているということだ。
同じ重さの?
相当な量になるよそれじゃ。
金じゃないんだから。
少量のマカとリャマが取引されたってぇ話だよ。
そしてウコンは「鮮やかな黄色」を示すウッコンが縮まってウコンってぇ名前になったとされているが、染め物にも使えるくらい鮮やかな黄色なんだこれが。和名はキゾメグサと言う。
ターメリックライスって知ってるか。
ウコンを混ぜておまんま炊き上げたもんだが、まぁまっ黄色だ。
肝の臓に良いとされており、お前さんみたいな酒好きにはもってこいな生薬だろ。
いやー、さすがはご隠居ですな。
でもってちーっと頭のたりねぇおいらには覚えきれなかったんで、一つここに書いちゃぁくれませんか。
最後まで面倒ぉかける奴だねぇ。どれ、お貸し。
ってんで書き付けた紙を持ちながら、忘れちゃいけねぇと帰りしな、読み上げながら帰る熊さんでございます。
ニンジン ニンジン
ゴオウのスッポンポン
カンゾウ ホウブシ
カイクジン コクロジン コウクジン
カイバ クコシのハゲキテン
ロクジョウ ブクリョウ エゾウコギ
トシシ トシシ
トシシのインヨウカク
インヨウカクのニクジュヨウ
ニクジュヨウの
センゾクダンの
トチュウ センボウの
トウチュウカソウの
マカ ウコン!
っとくらぁ。
こん中のどれかが入ってりゃぁおいらのナニもしゃきっとすんだろう。
おいーっ、ちょっくらごめんよー!
熊さん、勢い込んで入っていったのは薬屋でございます。
いらっしゃいませ。ヤマモトヒトシへようこそ。
けったいな屋号だねぇ。
そんなことよりさ、薬、くれ。
へぇ、手前どもは薬屋でございます。何をご入り用でございましょう。
ナニをご入り用でございましょう、と来た。
よーし良く聞けよ、良く効くナニをよこしやがれ。
と、申されましても、よくわかりませんが。
どれかはいってりゃぁいいんだよ。
薬屋だったらわかるだろうが!いくぞ!
ニンジン ニンジン
ゴオウのスッポン
カンゾウ ホウブシ
カイクジン コクロジン コウクジン
カイバ クコシのハゲキテン
ロクジョウ ブクリョウ エゾウコギ
トシシ トシシ
トシシのインヨウカク
インヨウカクのニクジュヨウ
ニクジュヨウの
センゾクダンの
トチュウ センボウの
トウチュウカソウの
マカ ウコン!
どうだっ!
は?
いや、は、じゃねぇよ。
ナニがこれする薬をよこせ、ってんだ。
と言われましても何のことやら
なんだ、薬屋だってのにわからねぇのか。
ならもう一回
ニンジン ニンジン
ゴオウのスッポンポン
カンゾウ ホウブシ
カイクジン コクロジン コウクジン・・・
あーあー店の前でそんなに唱えちゃってもう、行って!行って!止まらないで行って!
見世物じゃぁないんだから。
一体なんなんですか。ちょっと待っててくださいね。
店長!てーんちょう!
変な人が店の前に
変な人とはご挨拶だな、おい!おめぇが店長か。
へい、左様で。
ならその耳かっぽじってよーく聞きやがれ。
おめぇも薬屋ならわかんだろ!
ニンジン ニンジン
ゴオウのスッポン
カンゾウ ホウブシ
カイクジン コクロジン コウクジン
カイバ クコシのハゲキテン
ロクジョウ ブクリョウ エゾウコギ
トシシ トシシ
トシシのインヨウカク
インヨウカクのニクジュヨウ
ニクジュヨウの
センゾクダンの
トチュウ センボウの
トウチュウカソウの
マカ ウコン!
どうだっ!
いや、どうだと言われましても、、、どうなんでしょう。
どうなんでしょうってぇことはねぇだろ。
こっちは困ってんだよ、早くよこせよ。
早くよこせと言われましても、店先でかように大声出されましては
手前どもにはタチの悪い嫌がらせとしか。
そう!それ!
だから早ええこと、タチを良くしたいんでぇ。
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